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特集:U/Iターン経験者の対馬ぐらし(vol.14)

Vol.14 銭本慧さん(1 / 2)

“変えられないことを悲観せず、変えるべき変えられることを少しずつでも変えていく”

  銭本 慧さん 

大阪府出身 / 上県町在住

【プロフィール】

合同会社フラットアワー代表社員

東京大学大学院修了後、同大、長崎大学の研究員を経て対馬に移住、一般財団法人MITに就職。その後鮮魚の直販を手掛ける合同会社フラットアワーを設立

対馬0年目~研究から現場へ~

ーー対馬にいらした経緯などを教えてください

 東京大学の大学院でウナギの資源量がどのような要因で変動するのかについての研究に従事するなど、研究者として水産に関わっていました。その中で日本の水産業の衰退を実感していました。「どうすれば日本の水産業をよくすることができるか」「自分が貢献できることは何か」と考える中で、研究者として培った強みを活かして水産現場で仕事ができないのかという思いが大きくなっていきました。長崎大学のポスドクとして働いていましたが、現場に出てみたいという思いが強くなり、水産現場で収益を上げながら水産業を魅力的にできるような仕事の計画を練り始めました。

ーー研究からビジネスの世界に転身するのに躊躇はなかったのでしょうか?

 若い研究者はパーマネントの仕事に就けるまで、期限付きの契約を数回経験するのが一般的です。毎回再契約できるかという不安を抱えながら業績をあげていくプレッシャーを考えれば、起業して仕事を作っていくことの心配はそこまで大きくありませんでした。研究者の先輩や自治体の水産課に勤める友人、起業した友人に相談し、事業イメージを固めていきました。そして起業では成功の型は多様ですが、失敗にはパターンがあるので、「どうすれば失敗を避けられるか」について本を読んだり、ネットで調べたりしながら勉強しました。事業を通して産業や地域を良くするためには長く続ける必要があると考えていました。

ーーなぜ、対馬にしようと思ったのですか?

 長崎県内のいくつかの候補地を視察したのですが、対馬もそのうちの一つでした。時期がよかったことも ありますが、なにより漁師さんに「いなサバ」漁に連れていってもらい、対馬の海の豊かさを実感できたことが大きかったです。

ーー対馬を選んだのはビジネスを行う上で適地だと考えたからですか?

 必ずしも良い条件のみに目を向けてこの土地を選んだわけではありません。ただでさえ消費地から離れた対馬の中でも、フラットアワーのある田ノ浜は、だいぶ奥地にある場所です。それでも、インターネットと物流さえあれば、お客さんとの繋がりを継続し、魚を届けられる。不利な立地であればこそ、そこでやることが注目され、持続可能な漁業の一つ
の型を作ることができると考えました。

『対馬1年目~対馬へ、MIT で事業化目指す~』

ーー水産業の現場でやりたいということでしたが、漁師に弟子入りしたり、漁業研修生になったりすることは考えなかったのですか?

 自分が漁に出ることは想定していませんでした。当初は直販サイトをつくり、漁師さんから相場より高く買い付け、消費者に直接届けるというビジネスモデルを持っており、 (当時)漁師さんが代表理事を務める一般社団法人 MIT に就職し、周辺の漁師さんの力を借りながら事業化したいと考えました。ただ、やはり漁業そのものを理解する必要があるため、MIT での業務を平日に行いつつ、休日に一本釣り漁師の船に乗せていただき、一緒に漁をしながら自分のアイデアを事業にできるか考えていました。そのうちに、知り合いの漁師さんから船を譲ってもらえることになり、自ら魚を獲るところからやってみようと漁師となる決意をしました。

(つづく)

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